テーマ
有効な内部統制の構築は正確なリスク認識からはじまる
事例1
集金してきた売上代金を経理担当者が横領。
事件の概要
販売業を営む甲社では、営業担当者が自分の担当する得意先へ集金に行き、回収金を経理課長のY氏へ渡していた。経理部署には課長であるY氏のほか、係員として小口の支払と雑務を行う女性職員が1名いたが、回収金は、すべてY氏の管理下に置かれていた。社長も、長年にわたって誠実に仕事に取り組んできたY氏には全幅の信頼を置いていた。
Y氏は、回収金額を請求書、領収書控と照合のうえ、債権管理簿へ債権の消込記入、入金伝票の作成を行い、甲社の預金口座へ預け入れることになっていた。甲社では、営業への評価は受注実績に重点が置かれており、営業担当者は代金回収には関心が薄く、そのことが、Y氏に業務が集中する一因にもなっていた。預金残高については、社長が毎月、金融機関から残高証明書を入手し、帳簿残高との一致を確かめていたが回収金については請求書や領収書等との照合はまったく行われていなかった。
このような中、Y氏は得意先S社からの回収金を受領した後、管理簿への記入や伝票作成を行わず、これを横領した。Y氏は発覚を防ぐために、他の得意先からの回収金をS社からの入金として処理し、その後も同様の方法で得意先からの回収金をたらいまわししていた。
当初に発覚しなかったことをいいことに、犯行の回数・金額が膨らんでいった。そのため、実際には入金済みなのに、管理簿や会計帳簿においては未回収のまま残っている債権残高が多額になるに至り、資金繰りに疑問を抱いた社長が得意先に問い合わせたところ、犯行が発覚した。
会社は資金繰りの悪化から、取引金融機関に支援を要請せざるを得なくなり、さらには取引先からの信用力も低下したため、業績へも悪影響が出る事態となってしまった。
